狐とマシュマロ

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「けれど、最近は特に世の流れが早い。左門も右門も完全についていくことは難しいだろう……流行りに敏感なのは子供だ。だから君の意見を聞いてみたくて」 「ぐぅ」  ダメだ、私が何にひっかかってたのか最さんに伝わってなかった…! 詳しく話してもらえたけれど、結局子ども扱いは据え置きだ!  でも長生きのアヤカシから見たら、生まれて十数年しか立っていない私なんて子供と同じなのかもしれない。最さんだって、見た目は若いけれどものすごく年上の可能性もあるし……ここは諦めて話を進めた方がいいかな。  私がそんなことを考えていると、最さんは「それに……」と呟きながら視線を逸らした。何となく気まずそうな雰囲気に、どうしたんだろうと首を傾げる。 「……律も我が主も女性だからね。左門に女心が分かるとは……ちょっと思えないかな、と……」 「あ、ああー……」  どこか遠い目をする最さんに、思わず頷いてしまう私。  分かります、分かります。左門さんは悪い人ではないのですが、何というか、こう……女心とは縁遠そうな人ですよね。女性へのプレゼントを相談するのには、ちょっと向かないかもしれない。 「わ、わかりました。とりあえずお話を聞かせてください」  けれど学内で相談受付…という訳にもいかず、私は最さんのお話を聞きながら幻橋庵に帰る事にした。最さんの器量と注目度を考えて、先生達に見つかる前に移動した方がいいと思ったからだ。  既に何人かの生徒には目撃されてしまっているけれど……わざわざ探す人はいない……と思いたい。早めに七不思議に組み込まれてくれればいいなと思う。『放課後に現れる、存在しないはずの生徒』とか、そんなタイトルで。 「それで……最さん、主さんと律ちゃんにどういうものをプレゼントしたいですか?希望は何かありますか?」 「先日頂いたチョコレートがいいかな。律も好きみたいだし、主は食べた事がないけれど興味を持っているようだったから」 「分かりました。チョコレートですね!」  最さんと並んで歩きながら、私はあれこれと質問をしてメモ帳に書き記していく。バイトの身だけれど、折角私にお願いしたいって来てくれたのだから、ここは真剣に取り組まなければ。
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