狐とマシュマロ

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狐とマシュマロ

「見つけた」  夕暮れに染まる校舎。部活に向かう友人達と別れ廊下を歩いていた私は、後ろから聞こえた声に顔を上げた。  どこかで聞いたことがあるような男の人の声。誰だったっけ?と思いながら私は振り返って……そして絶句した。  冷たい印象の無表情の男の人。男子生徒の制服に身を包んでいるけれど……こんなに綺麗な顔立ちをしていたら、集団に溶け込むどころか浮いてしまうんじゃないだろうか。  笑顔で話しながら通りすぎていった女の子の集団が、こちらを二度見して……あ、三度、四度……五度見までいった。凝視してしまう気持ちは分かるけど、前を見て歩かないと危ないと思うよ……って、そうじゃなくて。 「り、(りつ)ちゃんのお兄さん!?」  驚きに目を丸くする私に、お兄さんはご丁寧にも「こんばんは」と挨拶を返してくれた。
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