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時間が余ったので、喫茶店に寄ることにした。
昔ながらのオフィス街、チェーンではない古びた店が目に入った。
ドアをくぐると、今どき珍しいくらい煙草の匂いがした。
構わずカウンターに座り、コーヒーを頼む。
常連らしき男性が、マスターと思しき男性と談笑している。
「いや~、仮想通貨ヤバイことになっちゃったねえ…。ほんとさぁ、最初に仕組みを作った奴が得して、おれたちは大損だよねぇ。それで俺思うんだけどね、そういう仕組み作った奴ってね、未来から来た詐欺師だと思うんだよね!」
「いやぁ…そうかもしれませんねぇ…。」
マスターの聞き流し方がやけに面白くて、こっちも笑いそうになるが、常連は構わず続けていた。
また、あの時のセリフを思い出す。
『みんな、仕組みを作る側に回る』
時代は、変わっていく。
このままAIだの何だのが発達していけば、確かに人間に自由な時間は増える。
カコが言っていたように、その時リアルなつながりさえあれば、面白いことが起こるのだろうか?
僕は、一人でいる方が楽だったりする。
運動にしろ、仕事にしろ、チームプレーは苦手な方だ。
独りが楽、と書いて独楽。
ただ、その時にはたぶん独りでいないほうが良いんだろう。
そして、今までできなかったことが、努力の末にできるようになるのは、カコに言われるまでもなく、サイコーな瞬間だ。
僕は、心の中で呟く。
まさかあいつ、未来から来たんじゃないだろうな…?
「そうかもしれませんねぇ…。」
マスターの声とともに、コーヒーが運ばれてきた。気のせいかもしれないが、その顔は微笑んでいるように見えた。
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