氷と太陽の黄金比

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 もう二度と。  もう二度と、だ。  もう二度と名月先輩には会いたいと思ってもいなかったんだから。 「次で俺が告白したら、記念すべき百回目って知ってる?」  重い沈黙の後、先輩は言葉を選んで話し出す。  顔を上げると、穏やかに微笑む先輩の顔があった。 「知ってます。数えてましたから」 「古いドラマに百一回告白してた人がいたから、俺も百頑張ってみようかなって思ってたんだけど」 「……名月先輩」  声が震えたのは心が震えたからだ。  先輩に言わないと決めたことがある。 だから私は貴方を冷たく、――冷たく突き放さなければいけないことがある。 「私たち、すでに百回目なんですよ」 「え? 俺、数え間違えていた?」 「いいえ」  心の中で、熱湯を注いだ氷がカランと音を立てて溶けた気がした。 「私たちの初めましては、入学式の日の一目ぼれじゃないんです」  告げた真実に、名月先輩の目は大きく見開かれる。  それはつまり、知らなかったということ。  それはつまり、先輩にとってあの時の私は0であって、どうでもいい存在だってこと。 「だから私は名月先輩がどうしても嫌いなんです。だから貴方の言葉は、何百回聞いても私の心には響かないんですよ」
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