氷と太陽の黄金比

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 *  私には人に理解されないような趣味がある。 グラスに氷を限界まで入れて、そこに熱湯を注ぐ。 私はその一連の行動が堪らなく、気持ちが高揚してしまうのだ。 氷が熱湯に溶かされていく。 けれど、グラスにめいいっぱい入っている氷の方が有利で、氷の隙間に入ったお湯はやがてぬるま湯になる。ぬるま湯の中で氷が勝ち誇ったように、カランと溶ける音を鳴らす。 これが私の氷と水の黄金比。 でもぬるま湯が好きなわけじゃない。お湯が氷に凍てつかせるのが好きなわけじゃない。 その過程が好きなの。 誰にも理解されない私の細やかな一人の時間の楽しみ。 私が氷と過程しよう。 貴方を熱湯と過程しよう。 私は過程だけが楽しくて、私に凍らされた貴方には興味は最早ない。 貴方は今日も私に溶かされる。 その数、99回。 再度沸騰して、熱湯になってくる彼は蒸発した分、注がれるお湯が少なくなってるのか最近はすぐに凍てついてしまう。
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