氷と太陽の黄金比

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手を伸ばそうとしても、私の背の倍はありそうな門の上には届きそうにない。 「すみませんが、取っていただけませんか」 「もっち」  嬉しそうに声を弾ませて、部室から持ってきたラケットで靴をとってくれた。  それにしても不自然な場所だ。放送で聞えて驚いた犯人がここに置いて逃げ去ったのかな。 「皆―、ありがとー! 靴、発見したよー」  電話しながら校舎に手を振る名月先輩に、すぐに校舎から何人か手を振り返しているのが見えた。  彼の言葉で一体、何人の人が手伝って探してくれていたんだろう。 「ありがとうございました」 「ううん。俺が悪かった」 早速靴を履くと、スリッパを先輩に渡す。 「ん? ご褒美にくれるの?」 「靴箱に片づけてください。このまま帰ります」  下駄箱まで戻りたくなくて、深々と頭を下げながらお願いする。 「先輩が私に絡まなかったら、私はこんな風に物を隠されることはないんです。二度と近づかないでいただけませんか」
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