ここに到るまで

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ここに到るまで

 世の中は希望に満ちている。  ああ、明日は素晴らしい一日になるに違いない。  ……。  僕は、一応の一人暮らしです。  月の収入はアルバイトの六万円のみですが、一軒家を借りて生活しています。築五十年の平屋で、畑付き。畑を荒れさせないことを条件に、格安で住ませてもらっています。  畑があるので、野菜には困りません。ご近所さんが苗や種を分けてくれるので助かっています。……食べたいものを植え、食べたいものを収穫し口にするという感じではありません。流されるまま、採れたものを摂取するという具合です。  いつになったら自分の好きなものを好きなように植えられるようになるんだよ、とブチ切れる余裕は僕にはありません。苗や種、そればかりか川魚の甘露煮や漬物などの頂き物。有り難いです。  井戸があるので、水道代はかかりません。ガスは使いたくなかったのですが、集落のプロパンガスを一手に扱っているというガス屋さんの営業トークに負け、仕方なく契約しました。  生活に支障があるとすれば、お風呂でした。なんと、浴槽の底が抜けていました。どうしようもありません。ただ、家での入浴を諦めてしまえば、この件はなんの問題もありません。  近くに温泉の共同浴場がありました。一回百円で利用出来ます。出入り口脇の、お地蔵さんの前に設置された料金箱に入湯料を入れて自由に入るシステムです。  無銭でも利用出来てしまいそうですが、お地蔵さんが見ていますからね。きちんと百円を入れます。  僕は、童話を書いています。時間があれば創作に打ち込んでいます。でも、なかなか思うようにはいきません。  滅入って、お酒で慰める日々です。カップ酒(焼酎)を絶賛愛飲中です。カップ酒は割高だとは思うのですが、お酒は、あればあるだけ呑んでしまうので大容量ペットボトルなんて置いとけないんです。
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