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青空が眩しく感じるほど、全てが美しく見えた5段目。
幼馴染の友人とおもちゃの取り合いをして初めて喧嘩をした。自分が悪いのをわかってはいたのに、なかなか謝ることができなかった。
「謝りなさい」と勇気をくれたのは、母の一言だった。
翌日勇気を振り絞って友人に頭を下げると、友人も悪いと思っていたのか、すんなりと許してくれた。
一段一段登るたび、子供は成長し、両親は年老いていった。
その姿が懐かしく、またとても寂しかった。
19段目に差し掛かると、大きく成長した青年が、ぎこちなく母と抱擁している姿が見えた。
「大きくなったね。」
母は涙声で言った。
道中何度もその子供は守られ、叱られ、迷い、愛されていた。
抱きしめてくれた母は小さかったが、暖かさは変わらなかった。青年はいつまでたっても母の子供だった。
私は思わず、声に出した。
「お母さん。」
眉間と鼻の奥がつんと痛くなる。
10段目や17段目の時には、母や父の愛情が鬱陶しかった。
それが、たった数時間で帰ることの出来る場所に離れるだけで、どうしてこんなにも不安で、家族が恋しくなるのだろうか。
22段目、青年はとても素敵な人と大学生活の中で出会った。
学生生活は単調だったが、彼女のおかげで充実していた。
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