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柔らかい日差しの中で、妻は子供を抱え微笑んでいた。
全てに祝福されて生まれてきた子供は女の子だった。
青年が生まれてきたときと同じだった。
妻は母となり、青年は父となった。
青年の両親は祖父母となり、よく家へ行く時の手伝いにやってきていた。
子供が小さな部品やおもちゃなどを誤って飲み込まないようにと、部屋の掃除は入念にするようになったし、悪戯をすれば叱った。
青年の叱り方は、いつか見た父とそっくりだったが、相手が娘だからであろうか。
青年が叱られた時よりは甘やかしていたように思う。
女の子は、37段目で初めて恋をしたようだ。
相手の子は同じ幼稚園に通う年長の男の子で、とても優しい子だと言う。自分が5歳だったときには「好き」だと言う感情は家族にしか抱かなかった。
恋をするには早すぎるのではないかと妻に聞くと、妻は「女の子は大体このくらいの時にフィアンセが出来るんじゃないかしら」と笑った。
青年は少しだけやきもちを焼いたが、何に対してかはわからなかった。
新しい家族が増えたのは39段目だった。
青年の子供は娘だけだったが、娘がどこからか犬を拾ってきたのだ。
見たところ雑種で、なんともとぼけた顔をしていた。その子犬を再び手放すことが出来ず、青年は引越しを決意した。
中古だが、広くてのびのびと暮らせる家を買った。
死ぬまでローンは続くかもしれないが、それでもよかった。
娘は一生懸命に犬の世話をし、妻もそれを優しく見守っていた。
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