あいのはなし

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生活を守っていくために妻も働きに出ることになった。 日中の短時間労働だが、娘が帰ってくるまでの間、犬は立派に家を守ってくれていた。 青年も初老にさしかかった47段目、青年の母が死んだ。 母は数年前から病を患っていたようだったが、心配をかけまいと青年たちには内緒にしていた。 娘は高校生という多感な時期で、祖母の死をうまく受け止められないようだった。 骨筋張ったその手から、だんだんと母の温もりがすり抜けていく。 光の中で抱きしめ、守り、育ててくれた人との別れはこの上なく辛かった。 もっと早くに知っていたら、母の好きな手土産を持って実家へ帰り、ゆっくりと話をして過ごすことも出来ただろう。 男性のことを疎ましく思う娘だって、きっと祖母と沢山話したいことがあっただろう。妻だってそうだ。 たくさん母に助けてもらっていた。 母の死は、男性の心に暗い影を落とした。 私は47段目から、ほんの少しの間動けずにいた。 死んだ女性の痩せこけた顔を、もう少し眺めていたかった。 こんなに痩せてしまっては、毎日を送ることもやっとのことだったろう。母に寄り添う父も、きっと毎日大変だったに違いない。 それでも電話をかければ、笑って「大丈夫」と言い張るのだ。困ったことがあればいつでも連絡をしろと言っておきながら、自分たちは何も言わずにいたのだ。     
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