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ため息と一緒に、また登り始めた。
48段目、家族が再び家族として動き出した。
父は母の死後、元の家を貸しに出し一緒に生活することとなった。妻も男性も娘も、祖父との同居を喜んでいたが、祖父だけはどうにも居心地が悪かったようだ。
祖父の病気がわかったのもこのときだった。
亡くなった祖母と同じ病気で、死ぬ運命は変えられなかった。
祖父が変わってしまったのは53段目だった。
娘は成人式を迎え、正式に大人として社会に認められた。
彼女は娘を抱きしめ、一人暮らしの引越しを家族全員で手伝った。物が少なくなった子供部屋には、娘が昔大好きだったアニメのシールが壁に貼られたままになっている。
娘が家を出てからというもの、祖父は静かに犬と一緒に散歩をしたり、趣味の将棋を近所の老人会の集まりで楽しんでいたりと余生を送っていたが、物忘れがだんだん酷くなり、私のことを忘れ、妻のことを祖母の名前で呼ぶようになった。
58段目、家を出た娘が泣きながら電話をかけてきた。
どうやら仕事で悩み、交友関係も上手くいっていない様子でしばらく休みを取って帰ってきたいという。
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