79人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
刺激を受け続ける事。
それが人生に飽きない秘訣だと僕は信じている。
言葉で言うとほんの数文字だけのそれを実践するのは意外と難しい訳で。
日常生活で刺激なんて滅多に出逢えない。
「君は僕の顔とお金どっちが目当てなの?」
最高に狂った雀に出会うまでは、僕は自分の人生に心底飽き飽きしていた。
常に独りの孤高の貴公子。
そう囁かれていた人物に興味本位で声を掛けたのが人生の転機。
雀宮蜜という人間は、当時から多様な意味で浮いていた。
「ねぇ、いつも独りで何してるの?」
僕が初めて投げかけた言葉は実に単純で、特別な意味などそこに含まれてはいなかった。
それなのに返って来たのがあの言葉。しかもとびきり綺麗な仏頂面までおまけされた。
一瞬驚愕した僕だけれど、それと同時に興奮した。
あの頃、高校生だった自分を褒めてあげたい。
よくぞ蜜に話しかけたねって。
「あはは、別にどちらも目当てじゃないよ。だって僕もどちらも持っているからね。」
整った容姿に、莫大な財産。
それらを持っている事を自覚し、ありがたい事に勝ち組な人生が決まっていた僕は、蜜に近寄る事へのメリットなんてこれっぽっちもなかった。
全てはただの好奇心。
僕の返答に瞬きを数回繰り返した後、蜜は大胆に引いた目で僕を見た。
「え…顔が綺麗で金持ちだって自分で言うんだね。」
「君に言われたくないんだけど。殴っても良い?」
最初に自分の顔と金のどちらが目当てかと尋ねてきたのはそっちの癖に、数秒で忘れてしまったのだろうか。
失礼過ぎる発言に頬が引き攣るものの、この時の僕は確信していた。
この男といれば、僕の人生は楽しくなる。
最初のコメントを投稿しよう!