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最高という言葉しか出ないよね。
童貞を拗らせているから、蜜の鷲崎さんへの愛情は歪なんて物じゃなかった。
「あれ、どうして怒っているのさ。」
週明けの副社長室。
そこの椅子に腰かけている僕の麗しい親友は、実に不機嫌だった。
「分からないの?」
惚けたように肩を竦める僕に、あからさまにむっとする相手。
だけど、気が抜けた瞬間にだらしなく緩んでいる口許を全然隠せていない。
それだけで、昨日彼に何が起こったのか分かってしまうんだから、僕ってば蜜に関しては何でも熟知しているみたいだ。
「質問を変えようか、凪咲、一体何処から何処までを知っていたの?」
そんな怪訝な表情で僕を見るのはよしてよ。
僕はあははと声をあげながら、ソファに腰かけた。
さて、ここで皆に聞きたいけれど、僕は何処から何処まで知っていたと思う?
答えは実に明白で単純だ。
そんなもの……。
「全部以外にあると思う?」
ここに来る際に、何処かの部署の子から貰った缶コーヒーを開封して流し込む。
うーん、やっぱり缶コーヒーだと味が落ちるや。
そう思って眉間に皺を刻んだ僕の胸倉が、正面から伸びてきた手によって掴まれ引き寄せられた。
「全部!?何て男なの凪咲!!!ずっとずっと僕を弄んでたという事!?」
相変わらず、綺麗な顔してるよね。
目前にまで迫った憤っている顔を眺めながら感心する。
性格は色々と問題しか抱えていないというのは残念でならない。
「落ち着いてよ、蜜。」
「酷い!!!酷いよ!!!」
流石の僕でも、少し蜜をからかい過ぎてしまったのかな。
目に涙を浮かべているようにも見える相手に、少しだけ反省する。
「いくら僕の事が好きで独り占めしたいからって、僕と鷲崎さんが両想いなのを知っておきながら邪魔してたなんて!!!この悪魔!!!!」
「ちょっと待ってよ、僕微塵も蜜の事好きじゃないんだけど。」
「嘘つかないでよ、ごめんだけど凪咲、僕は君とは付き合えないよ友達としてしか見てないからね。」
「……。」
「凪咲?」
「一発殴らせて。」
訂正。
反省なんて不要みたいだ。
「僕を愛してくれて構わないけど、僕の愛は紬だけの物なんだ。」
「もう死んでください。」
この勘違いが過ぎる親友は、とことん頭にお花畑が広がっているらしい。
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