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蜜と鷲崎さんの恋に関して、確かに僕は全てを知っていた。
だけど、勘違いしないで欲しい事が一つだけある。
僕は決して、二人の恋路を邪魔したわけではないという事だ。
寧ろ僕は…。
「蜜、常々言ってきたけれど、僕は蜜の味方だよ。」
「何処がさ。鷲崎さんに拒絶されて酒に溺れながら号泣してた僕を笑ってたじゃないか。」
「だってあれは傑作だったじゃない。」
「悪趣味だ!!!」
「好きな人をストーカーして監視する最強な悪趣味人間に言われたくないよ。」
「……凪咲の事?」
「ぶっ殺すよ、蜜以外にいるわけないでしょ。」
間を置いた挙げ句にどうして僕の名前を出したんだこの男は。
今も昔も、自分が見えていないのか、はたまた自分の事を棚に上げるのが得意なのか。
どちらにせよ、失礼極まりない人間だ。
漸く解放された胸倉に寄った皺を払いながら、僕は口角を吊り上げた。
さて、僕が今日胸を躍らせながら出勤したのはこんな話をする為じゃない。
「それより蜜、昨日は僕を置き去りにしてまるでシェイクスピアのロミオとジュリエットのように鷲崎さんと逃避行をしていたけれど、その後どうなったのか、勿論僕に聞かせてくれるよね?」
ソファの肘掛に肘を置き、頬杖を突いていつも以上に顔の筋肉に引き締まりのない親友へと視線を流す。
その表情だけで、大方の結果は想像つくけれど、それでも詳細を知りたくて仕方がない。
「鷲崎さんとはくっついたの?」
中々口を割ろうとはしない相手にもどかしさを募らせた僕の直接的な質問が飛ぶ。
それに対して、昨日に想いを馳せるように遠くを見つめた蜜の顔はそれはもう幸福に満ちていた。
なるほど、僕の踏んだ通り二人は上手くくっついてくれたみたいだ。
「言っておくけどね蜜、鷲崎さんと恋仲になったからと言って急に抱いたりするのは駄目……「ベッドの上での鷲崎さんは、想像以上に美しくて可愛かったよ。」」
この男、今何て?
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