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普通の女性なら雀宮蜜という人間に引くと思う。
いや、女性だけじゃない。僕もかなり引いている。
何に対しててって、それはもう全部だ。
長年片想いを募らせストーカーをし続け、奇跡的にその相手と結ばれた初日に監視モニターだらけの寝室でセックスなんて、普通じゃない。
引くよね、ドン引きだよね。
鷲崎さんに捨てられたら蜜を貰ってくれる人間なんて一生現れない。
頭を抱えてどう蜜に常識を教え込むべきか悩む僕に、陽気な奴の声が降ってきた。
「紬ってばね、蜜になら見られてても嬉しいですって、笑ってくれたの。」
…。
……。
………は?
「また妄想か何か?」
「違うよ、現実だよ。私の為を想っての行動だって思うと素直に嬉しくて幸せだって頬を緩めていた紬は天使かはたまた女神かと思ったよ。」
「……。」
「ねぇ、凪咲はどう思う?やっぱり天使かな、いやでも女神も捨てがたいよね。」
何だそれクソほどどうでも良いよ。
ていうか鷲崎さん、天使でも女神でもなくただの変人だよ。
あーあ。
どうやら全部、僕の取り越し苦労だったみたいだ。
余計な心配なんかしなくとも、蜜が鷲崎さんに溺れ切っているように彼女も僕の親友を深く愛してくれているらしい。
そっか、それなら安心だ。
だってほら、いくら狂っていてもやっぱり親友には幸せでいて欲しいからね。
「蜜の恋した相手が鷲崎さんで、蜜を愛してくれた人が鷲崎で良かったよ。」
蜜の中での大切な人ランキングで、これからは僕より上位に鷲崎さんがくることになるのは、本音で言うと少し寂しいけれど。
それでも、鷲崎さんは蜜を大切にしてくれそうだから、格下げも大人しく納得してあげようかな。
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