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日曜日。
劇芝居の主人公の如く、美しい鷲崎さんを連れ去った僕の美しい親友。
猛禽類に属する鷲や鷹が弱い動物を攫い食らうのが自然界の摂理らしいが、どうやら人間界ではうちの雀の方が強いらしい。
皆、姓に鳥の名前を持ってしまったばかりに、何とも面白い小説のような話になってしまったな。
どんなドラマよりも刺激的な現実に悠長に微笑んでいる時間もなく、すぐさま僕は席を立った。
「驚かせてしまい申し訳ありません。雀宮蜜に替わり、秘書である私の方からお詫び申し上げます。」
両者がいなくなり唖然とするテーブルへと歩み寄った僕は、夜鷹夫妻に詫びを入れた。
それから数分後…何故か夜鷹織とお茶を楽しんでいた。
「せっかく帝王ホテルまで出向いて何もしないのも寂しいので、良ければお茶に付き合ってもらえません?」
テンプレートに沿ったお手本みたいな誘い文句。
彼女とよく似た顔に柔らかな笑みを湛えた夜鷹織は、女性に困る事などないに違いない。
親友が消えた今、本日の予定までも消失した僕は快くそれを受けた。
「随分場を取り乱してしまってごめんね。どうやら僕の親友は君の妹さん以外に人を愛せないみたいなんだ。悪い人間じゃないって事は、親友の僕が証明する。だから、もし二人が上手く行くのなら交際を許してもらえないかな。」
テーブルに並んだダルマイヤーのコーヒー。
僕も彼も、ミルクだけを入れ砂糖なし。どうやら夜鷹織とは気が合いそうだ。
「本当に驚いたよ。」
そう言いつつも、余裕な笑みを落とす夜鷹織に本当に驚いたのだろうかと疑いたくなる。
「昔から夜鷹の名前に苦しんで、その癖に誰よりもデザインを愛して、僕以外の人間と関わろうともしなかった紬が恋に落ちただけでも衝撃だったけれど、その相手が雀宮グループの御曹司だと聞いた時にはそれこそ開いた口が塞がらなかったよ。」
そりゃあそうだと思う。
同じファッション業界で名を轟かせているブランド同士が恋に落ちる。
誰もがびっくりな展開だろう。
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