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「無い、無い、なんで無いんだ!」
地面の表面の砂はサラサラしていて、掘っても掘っても穴に周りから新しい砂が落ちてくる。それが僕の便器の捜索を、更に困難なものにさせているのだ。
ザッザッザッザッ
ザッザッザッザッ
ザッザッザッザッ
僕はそれでも霧中で掘り続けた。何分、何十分掘り続けたろう。掘っても掘っても便器は見つからず、ただ時間だけが過ぎていった。
「あっ」
そして気がついた。ビッグマウス・サンドワームの群の中に置き去りにした二人のことを。あんまり必死に便器を捜していたので気がつかなかったけれど、もうあれから何分も経っているのだ。僕が便器を捜して地面を掘っている間に、二人はどうなったんだろう。
「エメドラちゃんブラカスちゃん!」
僕は音に反応するビッグマウス・サンドワームの群の中にいることを忘れて、大声で叫び声を上げた。そして二人のいた方向に目を向けた。
「シー」
振り返った僕の目に、「静かに」というジェスチャーをしながら太陽の降り注ぐ砂漠を、真っ直ぐにこちらに向かって歩いてくる二人の姿が見えた。二人には怪我一つ無く、その表情には笑顔さえ浮かんでいる。
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