1、いつも彼が泣いてばかりいたのには、理由がありました。

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「そうだよ、オレだよ。」ハツカネズミのビリーは、ヒョイと一回転するとナキムシの足にちょこんと乗りました。 「ビリー。」ナキムシは泣きそうな声を出します。 「そうだよ、オレだよ。」ビリーはそんなナキムシを見て、泣くなよと言わんばかりにちょこちょこと腕を駆け上がります。 「すっかりオイラ、ビリーは死んだと思ってた。」ナキムシは腕の上にいるビリーをゆっくりとその大きな手のひらにのせます。 「勝手に殺すなよ。だから、泣くなって。」また泣き出すナキムシに向かって、ビリーまでつられて泣きそうになっています。 「ごめん。」兄のタイヨウが亡くなってからというもの、ナキムシがこれくらい嬉しかったことはありません。 だから泣くなと言われても無理な相談でした。 「まぁいいや、久々の再会だからな。」ビリーも涙をぬぐうと、尻尾を振って地面にまた降りました。
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