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「あーくそ。泣くなよ。」ビリーは横目でナキムシを見ながら言いました。
「タイヨウは、タイヨウは血を流しました。」とナキムシが声を震わせながら言います。
「そうだよな。」ビリーは干草をパッと蹴り上げます。
「タイヨウは血を流していました。」ナキムシはもう一度繰り返して、立ち上がります。
「おい、わかったって。で、それをやったのは誰だい。」ビリーはナキムシを見ながら言いました。
「それは、それは。」ナキムシはもう泣いていません。クワを持って仁王立ちになっています。
「それは?」ビリーも立ち上がります。
「それはキクちゃんとシオンさんだ。」キリっとしたナキムシの目つきは鬼のようでした。
「そうあいつらだ。」ビリーはもう一度干草を蹴り上げました。
「キクちゃんとシオンさん!」ナキムシはクワを振りまわします。
「おい、危ないって。ここでやるなよ。」ビリーは小さな体をさらに小さくして、クワをよけるようにしました。
「タイヨウ、タイヨウ。」でもナキムシはまだクワをこん棒のようにやみくもに振っています。
「そういうことだよ。なのによ、お前はなんでそのシオンさんの所にいまだにやっかいになってるんだい。」ビリーは干草の一本をタバコのように口に持っていきました。
「やっかい。」ナキムシはそう言うと、ようやくクワを地面に置きました。
「そうだ、お前は厄介者として、奴隷みたいに働かされて、それで黙ってるのかよ。」ビリーはナキムシに言います。
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