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ホテルで濃密な時間を過ごした後帰宅すると、あいかわらず夫はテレビの前から動いていない。
私はシャワーを浴びようと、バスルームで服を脱ぎ始めた。下着姿になった時、妙な視線を感じた。
いつのまにか夫が来て見ていたのだ。
「ちょっと、何見てんのよ」
夫はいかにも酒に酔った感じでニヤッと私を見る。
「あいかわらずいい身体してるねえ…」
夫はそう言って抱きついてきた。
「やめてよ、酒臭い」
「いいじゃないか、せっかくの休みなんだしさ」
夫は下着の上から胸の谷間に顔を埋めるようにしてきた。そして何かに気づいたような表情をした。
「ん?この香り…今流行ってるやつだよな」
私は夫が何を言っているのかわからなかった。
ホテルを出る前にシャワーを浴び、香水もなにもつけてはいない。
「おまえ、一度会ったことあるだろ?うちの橋本課長…好きなんだよな、これ、なんとかミストっていうやつ、いつもつけてるんだぜ…おまえも使ってたのか…」
私はドキリとした。
そうだ。橋本課長は下着フェチなところがあった。ホテルのベッドで、彼は私のブラジャーに顔を擦りつけたり、舐めまわしたりしていた。私はシャワーを浴びたものの、それは身体を洗っただけで、下着はまたそのまま着けて帰ってきたのだ。そこに彼が愛用していたミストの香りが染みついていたのだろう。
私は危うく、なにもつけていないと言うところだった。
とにかく今はこれ以上夫を刺激したくなかった。
「…そう、今日ね、友達が持ってたから使ってみたのよ…それより、ねえ、汗かいたからシャワー浴びたいの。待っててよ、ね」
私はなるべく優しくそう言って夫を追い出した。
下着をすぐに洗濯機にかけ、シャワーを丹念に浴びた。なぜか全身に橋本課長の香りが染みついているような気がして仕方なかった。
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