5人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「こんなに心配してくれなくても、大丈夫だよ?
ショウゴさん。」
カイが白いキッチンカウンターの上で
ショウゴのための八女茶を 丁寧に淹れながら、微笑んだ。
いつも母親が送ってくる小包に入っている この翡翠色の日本茶は
ほぼショウゴ専用になっている。
カイもオウジも コーヒーメイカーで淹れたアメリカン、
もしくは冷蔵庫のミネラルウォーターで充分なのだ。
とても弱弱しく、
すぐにも 空気に吸い込まれ消えてしまった
その頬笑みに
まだまだ大丈夫ではないコトを感じて
ショウゴはついオーバーアクションに、声を張り上げた。
「違うの違うの~っ。
なんたって暮れでしょう~~?
日本人客が少なくて、余りもんが出ちゃうんだもーん!
もったいないから
消費するの手伝ってほしいのよぅ~~」
オウジが 行方不明になったあの晩以来、
ショウゴはおとといと今日で2回、
惣菜をお重に詰めてやって来た。
カイがまた 食べられなくなっているのではないかと、
様子を見に来るのだ。
毎日来ない辺りにも 気を遣っているのが、
カイにはわかっていた。
「ハハッ
ショウゴさん いつもそう言うから本気にしてたのに、
”ショウゴがアンタに
余りものなんか食べさせるわけねーだろ” って、
こないだオウジ君がさ・・」
その名前が うっかり口から出た途端、
カイの眉が少し苦しい形をとった。
最初のコメントを投稿しよう!