第11章 まるで不気味な人形のような

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「‥‥いいから、さっさと帰るぞ。ほら」 そんな言葉とともに、急に右手がぬくもりに包まれ、ぐいっと引かれる。 恋人つなぎ、なんてものじゃなく、乱暴に握られているだけだけど、手が繋がれてる、と認識した瞬間、顔に熱が集まるのを感じた。 手を握ったまま、歩きだす矢吹くんにつられて、引っ張られるように再び歩き始める。 「‥‥ま、街中でこれはちょっと‥‥」 「別にいいだろ、全然人いねぇじゃん」 確かに、人通りの少ない住宅街ではあるけれど‥‥と思いつつ、振り払えない自分に苦笑してしまう。 私の手を包み込む、矢吹くんの手のあたたかさと、さっきより表情が明るくなった横顔に、嬉しくなるのを感じていた。 「‥‥これが、好きってことなのかなぁ‥‥」 「あ?‥‥何か言ったか?」 「ううん、何でもない」 慌てて首を横に振って、手を握り返して歩き出す。 私が手を握り返したのを感じたのか、矢吹くんは一瞬、意外そうに私を見た後、少し嬉しそうにふっと笑った。 そんな笑顔を見るだけでも、心が温かくなってしまう。 この気持ちが、「好き」とか「恋」と呼ぶものだったとしても、色々大変な今はそんなことを言っている場合ではない。 だからもう少し、この曖昧な関係のまま、矢吹くんへの自分の気持ちを確かめていきたい。 矢吹くんと肩を並べて歩きながら、私はそんなことを思っていた。
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