かぐや姫の愛したソルベ

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かぐや姫の愛したソルベ

 私は人の羨む物をほとんど持っている。  美人だし、容量も良いし、学校の勉強も困ったことがないし、家柄も一応良い。だって、老舗の家具屋だし。コミュニケーション能力もある。  だけど、結婚だけはまだ。華の二十六歳だっていうのに、予定もない。  理由は、分かっている。大した理由ではないの。  とても、些細なことが気になる質なだけ。  そして、相手に求めていることが多分、人より多い。 どれも、とても細やかなことなのだけど、その些細な条件が100個ある。  その変わり100個の条件を満たしている人が私の前に現れたら、すぐにでも結婚するってパパに言ってある。  それが小さい頃、パパと交わした約束。  覚えている限りでは、最初のパパとのやりとりは可愛らしいものだったはずなの。 「早苗(さなえ)は大きくなったら、どんなお婿さんを連れて来るんだろうなぁ」  パパは仕事から帰ってくると、幼い私を軽々と抱っこをしてくれた。地面が遠くなる感覚とパパとパパの香水の香りは、私の大好きが詰まっている時間だった。その時間にパパは、必ずと言っていいほど、私のお嫁さん姿や将来のお婿さんやらの話をしていた。  そして、ママにたしなめられていた。 「あなた、何を言ってるんですか。この子はまだこんなに小さいんですよ」  ママは、歳をとった今でも美人だけど、昔はすごく可愛いママだった。保育園でも自慢のママだった。口元に手を当ててコロコロと笑う姿が、まるでおとぎ話のお姫様のようなの。 「何を言ってるんだ。時間が経つのは早いんだぞ。時は待ってくれないんだ。こんなに可愛い早苗も、あっという間に美人なお嫁さんになるんだ。なぁー早苗?」 「うん。早苗、パパくらい大好きな人と結婚するの。それで、ママみたいな可愛いお嫁さんになるのー」  だから最初の条件は、1の私が相手を愛しているから始まっている。最初は条件なんて、たったそれだけだったの。  ママみたいなお姫様のような可愛いお嫁さん。パパみたいに私を一瞬で幸せにしてくれる旦那さん。私の可愛い夢。  だけど、年月が経つにつれて、徐々に条件が増えていった。今では、2から25は相手の性格や好みに関すること。  26から60は外見。別にイケメンじゃないと嫌というわけではない。ただ、好みの顔や一緒にいたい顔、身体的特徴の条件を上げたら、これだけあっただけ。  61から85はして欲しいこと。これを具体的にあげるなら、61はレディファースト。62から先は、レディーファーストに連なること。ドアは先に開けて待つとか。それから、72誕生日はサプライズ。73結婚記念日を忘れない。74結婚記念日は慎ましく祝う。  こんな感じ。多いけど簡単。  86から95は、さっきの延長で結婚後の生活について。今の仕事は好きだから当然、共働き。家事は分業じゃないと嫌。  86窓吹き掃除は月一回。87電気の付け替えは必ずやって欲しい。88洗濯物の畳み方は、私に合わせてブティックと同じ畳み方。     
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