プロローグ――必ず勝てるギャンブル

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 私たちは食事をしながら、互いに近況を話し合った。 「――なんとまぁ、それは大変だったな……」 「ええ、ほんともう、たいっへんでしたよ!」  私は先週の連休中にあったトラブルについて先生に話した。レンタカーで大学の友達数人と一緒に女子会を兼ねた旅行に出かけたのだが、その帰り、車を事故らせてしまったのだ。恥ずかしながら、運転していたのは私。夜道に猫が飛び出してきて、慌てて避けようとしたらそのままブロック塀に激突してしまった……という具合である。自分の注意力不足とテンパり癖はうっすら自覚していたが、まさかあんなことになるなんて。……まぁ、人を轢いたりするような最悪の事態にならなかっただけ、マシだったとは言えるかも知れないが。  問題は、そう、お金だ。車の修理代とレンタカー店への営業損失賠償……保険に加入していたから幾らか補償は下りたものの、それでも大学生にとってはかなり手痛い出費だった。 「留学のためにせっかく貯金してたのに……それで殆どパァですよ」  そう、貯金しているのは、留学の費用を捻出するためである。来年、出来ればイギリスあたりに行ってみたい。バイトを始めたのもそれが理由の一つだ。三年生で就活や卒論の準備も始めなければならない時期なので三ヶ月程度の短期になるだろうが、憧れだった海外留学というものを経験しないまま卒業するのは惜しい。 「ふぅむ……すると井手川は、今、金に困っているわけか?」 「まぁ……正直言って、そうですねぇ」 「そうか……」
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