風速100メートル

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「わがままだな、早く説明を寄越せ」 「聞いてくれるのか? ────それが……、ここから遠くない山間の吊り橋から若い女性が転落死したんだ。女性の名前は斎藤ニコ、二十四歳」 「ニコ?珍しい名前だな」  立神の話を虎太郎は遮った。いつも彼は名前に反応する。 「日本人とアメリカ人とのハーフなんだ」 「なるほど、ハーフか。それで?」 「今回も自殺なのか他殺なのか、事故なのかが分からない」 「ほぅ、何か事故でも自殺でもないと思わせる物があったんだな?」  事故や自殺の場合、警察は深く調べない。ならば、と虎太郎はじっと立神の答えを待った。檻の中にちょこんと座る姿が可愛らしいと言われていたのは、つい数年前までで今ではおっさんとも言われる虎太郎である。 「彼女の持ち物から手紙が見つかったんだ」 「手紙?何が書いてあった?」 「”100になったら死ぬ 93”って」  ほら、と言って立神は自分のスマホで撮ってきた手紙の写真を虎太郎に見せた。 「遠くて見えねぇな、もっと近付けねぇのか?」 「またかい?ここは外だ、檻に手を近付けているところを飼育員さんに見られたら、きっと僕はこの動物園を出入り禁止になってしまう」  前に立神は誰も居ない獣舎で檻の中に手を突っ込んだことがあったが、ここではさすがにそれは出来ない。貴重な探偵との繋がりを今失うわけにはいかないのだ。 「じゃあ良いさ、言葉で頑張って説明してくれ。数字はアラビア数字か?」
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