風速100メートル

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「それって僕は褒められているのかい?」  今まで、立神は分からないことがあると直ぐに虎太郎に頼っていた。今回のことで立神に自信がつけば良いと思った虎太郎の作戦を目の前のへっぽこ刑事は知らない。恐らく、これからも気が付くことはないだろう。 「調子に乗るな。早く戻って自殺者の死体を見つけるか、関わりがどこから来たのかを調べろ。それと」 「それと?」 「もう来るな」  まるで全てを拒否するように虎太郎は鬣を立てながら大きく吠えた。静かな園内に響くほどの吠え声は立神の身体を震わせた。しかし、彼の外と中は全くの別物だった。 「いいや、僕は100歳になってもここに来るよ」 「俺が先に死んでるよ、ライオンの寿命、何年だと思ってやがるんだ……」  ブツブツと文句を言いながら、虎太郎が檻の奥に身体をゆらゆらと揺らしながら歩いていく。影に紛れてしまった猛獣に「またな」と心の中で別れを告げ、立神は動物園の出口に向かった。今日は閉園のアナウンスが掛かっていない。こんなに明るい時間に帰ったことがあっただろうか?と、ふと思い、立神は虎太郎が夜行性だということを思い出した。 「なんだ、眠かっただけか」  出口のゲートを潜り、立神はフッと笑った────。
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