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「よく回る口だな」
「そこ!?」
「少しばかり驚いた」
「なにに驚いたんだよ。驚いてるのは僕の方だ。いきなり現れて、わけの分からない言い分を並べ立てて、君は、一体なんなんだ」
「おやおや、トミーくんじゃないか」
大人の男の声がした。いつの間にか周囲には大人がたくさん増えていた。それは学園の先生であったり、救急隊であったり、スーツを着た背の低いおじさんと、背が高すぎるおじさんであったり。人形は振り返ると、背の低いおじさんと背の高いおじさんに言った。
「これはオタル刑事とネムロ刑事」
オタル刑事が背の低い方、ネムロ刑事が背の高い方らしい。オタル刑事はかぶっていたハンチングを、あいさつめいてひょいっと持ち上げる。
「トミーくんがいるということは、今回の件もすぐに解決しそうだね」
「そりゃあもう。犯人はこの少年です」
トミーと呼ばれた人形は僕を指さす。
それまで優しげだったオタル刑事の眼光が急に鋭くなった。
「えっ!? ちょ、ちょっと待ってよ。違います。僕は犯人なんかじゃありません。犯人はこいつの方です!」
人形に指を向けると、オタル刑事とネムロ刑事は一瞬顔を見合わせた。
「それはないよ、少年、だって彼は、探偵だよ」
「た、たんてい?」
「そうだよ。探偵検定一級保持者の中でも一流の探偵だとお墨付き、美少年探偵のトミーくんだよ」
探偵検定? 一級? 美少年探偵? なに言ってるんだ?
なんだか、頭がくらくらしてきたぞ。
でも、こんなところで倒れるわけにはいかない。それこそこのわけの分からない連中に、犯人に仕立て上げられてしまう。そんなのごめんだ。
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