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第一章 怒り
「隼人さんが家に帰らないの。」
白髪の男の指示で
例のスナックに滝川を呼び出してから
一週間が過ぎた頃、美咲から林に連絡が来た。
久し振りの彼女の声は
懐かしく感じて林の胸を締め付ける。
果たして上手くいったのか。
林は実際に何があったのか知らない。
だが滝川の様子が変わったのは
遠目から見ていても分かった。
明らかに滝川は明るく感じが良くなった。
人はそれを【もうすぐ父親になるから】だと解釈していたが、
林はそうではないことを知っている。
だが知ってはいるが、滝川に何が起きているかは知らない。
まさか、身重の妻を置いたまま
自宅へ帰っていないとは思っていなかった。
どれだけ自己中なんだよ!
林の中で滝川に対する怒りが大きくなってゆく。
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