7人が本棚に入れています
本棚に追加
第四十章 現状把握
彼はその足で病院に向かう。
主治医は在席していた。
姉の病状と、回復の見込みを尋ねると
彼は首を横に振った。
「ご両親に言った金額はあくまでも受け入れ態勢が整って
ドナーが見つかってからの話ですからね。
ぴったりのドナーが見つかるだけでも
結構な確率なんですよ。」
「移植しか方法は無いんですか?」
「完治させるなら、それしかないです。
今のままでは行動は制限されて
下手したらベッドで寝たきりになる。」
「そうですか。」
ため息をつく滝川を、医師は同情交じりの目で見つめた。
「たまたま事故に遭うとか、脳死状態とか・・・・・・
めったには無いですが、0ではないですから。
希望は無くさないことです。」
肩を叩かれ、滝川は我に返った。
“元気な心臓”
その言葉が頭を回った時、彼の中にアキコの姿が思い浮かんだ。
一瞬寒気がして、自らを抱く。
変な事を考えそうになる自分が怖かった。
最初のコメントを投稿しよう!