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第四十三章 告白
だがそんな彼の思いも、一言の元に却下された。
「あなた何言ってるの?」
滝川が実家に行き、両親に自分の思いを告げると
二人は唖然とした。
「あなた、もうすぐ父親になるのよ。」
母親が滝川の両手を握った。
「あなたがお姉ちゃんの事、大好きなのは知ってるわよ。
だけどもうあなたは、一人の身体じゃないの。」
正直、美咲の事は失念していた。
もう林に任せる気だったが、確かに順番が違う。
ましてや両親は何も知らないのだ。
「美咲さんには赤ちゃんがいる。その子はあなたの子供なのよ。」
正気を疑うような口調で言う。
「隼人、しっかりして頂戴!」
ああ。
彼は内心深いため息をついていた。
俺が美咲と早く別れないから、
まるで上手く行っている夫婦のふりをしていたから
こんな事になったのだ。
子供が出来ると言うことは、死ぬ自由さえも
俺から奪うのだな。
考えた末に、彼は口を開いた。
「父さん、母さん。話があります。」
滝川は覚悟を決める。
改めて二人に正面から向き合うと、
空気が張り詰めるのを感じた。
両親には本当の事を話そう。
彼らがどう判断するかは
告解の後だ。
滝川は大きく息を吸う。
そして二人の目の前で土下座した。
それは長く苦しい告白の始まりだった。
シリコンドールは眠らない act2隼人 <中編>完
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