『真山司』という名前

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 陸上部では基本的には、短距離部門と長距離部門に分かれて練習する(青城南には投擲の選手はいないらしい)。僕は100mを専攻するつもりだったので、短距離部門で練習することになった。  これまで陸上競技を取り組んでこなかった僕は「動きづくり」を徹底的にやらされた。  「動きづくり」とは簡単に言えば「いいフォームをつくるための練習」だ。速く走るためには、自分の力を無駄なく、かつ効果的に使うことができるフォームが必要だった。  僕は「動きづくり」でフォームの悪い点をいくつも指摘された。肘の曲げ方、腰の位置、膝の上げ方から降ろし方、幼い頃から走る上で全く意識したことのないものばかりだった。 「そのうちフォームは固まるよ。その頃にはちょっと速くなっていると思うよ」  と知念が言っていた。  そして、陸上部だから当たり前と言えば当たり前だが、とにかく走ってばかりの部活だった。150mを走り、ジョグでスタート時点まで戻るとまた150m走る、それを五本繰り返すというインターバルトレーニングでは僕はまともについていくことができなかった。知念や篠原はついていっているので、一年だからといって言い訳にはならない。  家に帰ったらひたすら寝てしまい、大好きだったゲームもやらなくなった。予習復習などできず、中間テストも散々な結果に終わった。  六月になり、夏のインターハイへと続く大会である総体予選では、当然、僕は大会にエントリーすらされず、ただスタンドから見守ることになった。  三年の先輩たちが引退していくと、一、二年を合わせて二十人もいない、その中でも男子短距離部門はたった六人しかいないので、僕にも大会に出るチャンスがやってきた。七月前半の学年別大会という小さな大会があり、その大会に一年の知念、篠原、そして僕が100mで出場することになった。  
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