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僕は僕であるために
翌日の授業は全くと言っていいほど、聞いていられなかった。予選敗退だろうが、なんだかんだで身体は疲れている。
六限の授業が終わったが、僕は席から立ち上がるかためらっていた。
このまま部活に行くべきかどうか悩んでいた。昨日の大会で、『真山司』の名前の重さにはもう懲りた。
なんとなく携帯電話でニュースサイトを見ている時だった。
「あれ? 真山、部活行かないの?」
顔を上げなくても誰の声かわかった。
僕の席の前に立っていたのは、北見玲奈だった。
立ち上がらない僕を見ながら、右に首を傾けた。こういう仕草って女子は狙っているのだろうか。
「いや、あのさ……」
「早く行かないと遅れるよ?」
「……だね」
北見の笑顔に釣られて僕も笑い、僕は席を立ち上がった。彼女の笑顔に僕は勝てないらしい。
部室までの道を北見と歩いた。
「大会翌日ってさ、なんか眠くって今日の授業ほとんど寝てたよ、私」
確かに今日の北見はなんだか眠そうだった。北見は昨日は予選を2位で通過したが、準決勝で敗退していた。
「たった2本の100mなのに何だか異様に疲れちゃうんだよね、大会って」
「あー、それはなんかわかるかも。1本しか走ってないのに、オレもすごく疲れた」
「不思議だよねー」
他愛もない会話なんだろうが、北見と話すのはやっぱり楽しい。部活を辞めてしまったら、北見と話す機会は減ってしまうのだろう。それはもったいない気がした。
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