第二話 恋の終わり

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 これまで、ユーリの口から他の女の子の話を聞いても平気だったのは、本気ではないと知っていたからだ。リリーにいつも言うように、他の子にも「大好き」とか「可愛いね」と言っているだけだとわかっているから。  だが、そのときのユーリの表情はこれまでとはまるで違った。  長い睫毛が頬に影を落とし、憂いを帯びている。思い悩んでいるのが、よくわかった。 「本気なのね。すごく好きなのが伝わってくる」  遊び人のユーリを本気にさせたのは一体どんな人なのだろうと、そんな疑問がわいてくる。それが伝わったのか、ユーリははにかみながらリリーを見る。 「うん。すごく好きなんだ。他の人はあまり気づいていないみたいだけど、きれいでかわいくて。……薬草園にたたずんでる姿なんて、神秘的で美しくて、一枚の絵みたいなんだ」  想い人の姿を思い出しているのか、うっとりしてユーリは言う。 「……薬草園ってことは、その人は魔女なの?」 「うん、魔女だね。僕のかわいい魔女さん」  ユーリの返事を聞いて、よりいっそうリリーの胸は苦しくなる。  きれいで可愛い上に、その人は魔女だというのだ。  かないっこない、と思うと苦しい。なりたくてなれなかったものを好きだと言われたら、どうすることもできない。 「……そうなんだ。惚れ薬は、ちょっと作ってあげられないけど、うまくいくといいね」     
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