第二話 恋の終わり

4/5
308人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ
 泣きそうになるのを何とかこらえて、リリーは言った。努めて笑顔でいるのは、せめてもの矜持だ。好きな人の前でみっともなく泣いたりしたくない。その思いだけで、やっとのことで踏ん張った。 「じゃあ、どうしたらいいのかな。どうしたら、その人に思いが届くのかな」  リリーの苦しみにまるで気づかず、なおもユーリはリリーを見つめる。榛色の目は、切なげに細められている。  その視線が、問いが、どんなにリリーの胸をえぐるのか、ユーリは知らないのだ。  痛くて苦しくて、泣いてしまいたくなった。それでも、これからも友人としてユーリのそばにいたいのなら、質問に笑顔で答えなければならないのだ。 「それなら、今までみたいな軽口はやめて、その人にだけ『好き』って言うようにしてみたら? そしたら、信じてもらえるようになるかも」  言いながら、またズキンと胸が痛む。  もし本当にユーリが想い人にだけ「好き」と言うようになったら、リリーも言ってもらえなくなるということだ。もう甘い声で囁いてもらえなくなるということだ。  そのことがわかって、目の前が暗くなる。 「そうか。……じゃあ、今後はそういう方向性で頑張ってみるよ」  欲しい言葉ではなかったのか、困ったようにユーリは笑った。  そんなふうにユーリを困らせる人がいるのだということに、リリーはいよいよ泣きたくなった。  それでも、その日リリーは笑顔でユーリを見送った。     
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!