第11章 大気圏突入、そして

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理紗が司令船(コマンドモジュール)を飛び出すと、約30秒程で自動的にパラシュートが開いた。パラシュートの降下訓練は受けていないが、緊急事態(エマジェンシー)ガイダンスで原理だけは理解していた。下方に見える湖に向けて緩やかに降下していく。周囲を見渡すと、ビルのパラシュートは理紗の上方、100メートル程離れた所に見える。 下方を見ると遠くにグランドキャニオンの壮大な風景が広がっている。太陽の位置から、着水しようとしている湖はレイクパウエルかと理紗は思った。 5分程の降下で、レイクパウエルの湖面に着水した。自動的に空気の力でフロートが展開し、身体を湖に浮かせてくれる。右手を見ると50メートル程先にビルが着水したのが見える。 理紗はビルの着水した場所に向けて泳いだ。ビルが手を振っているのが見える。 近づいてビルとハイタッチをした。 「良かったビル。プランCが成功だね」 「うん、ありがとう理紗。ハグしてもいい」 「勿論よ!!」 湖の中で二人はぎゅーとハグした。 ヘルメットを被っているのでビルの顔は見えないが、彼は泣いている様に肩を震わせていた。
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