第6章 最初のトラブル

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「46、48、最大抗力点(マックスQ)通過、メインエンジン最大出力へ」 「了解(コピー)、マックスパワー」 ダグが復唱し推力(スラスト)レバーを一杯に押し込んだ。メインエンジン出力が105パーセントで安定する。 「60秒経過、速度マッハ1.5、高度3万8千フィート」 「100秒経過、速度マッハ3.5、高度10万6千フィート。全てのデータは規格公差内」 その時だった。理紗の見ていたL2モニター内に真っ赤な警告が表示される。 「左SRBの燃焼室内圧力上昇!?」 理紗が叫ぶ。既に規定の二倍の圧力を超え更に加速度的に圧力が上昇している。SRBの分離は15秒後だ。しかし、このままでは・・ 「理紗、SRBに異常発生だ!! 緊急分離シーケンス!!」 ダグが叫ぶ。 理紗はその声を聴き、パネルC3のSRB手動分離ボタンを強く押し込んだ。SRBを外部燃料タンクに固定していたボルトが破裂し、左右のSRBが分離された。その瞬間だった。機体を離れた左のSRBが空中で爆発した。 幸い加速しているアトランティスに破片は届かなかったが、あと数秒分離が遅れていたら、アトランティスも爆発に巻き込まれていただろう。 理紗はそのままC2パネル上のキーボードで計算を始めた。 計画の12秒前にSRBの推力を失った。このままでは軌道に届かない可能性がある。
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