第7章 月軌道へ

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第7章 月軌道へ

理紗はSPS(主推進エンジン)を78秒噴射し、軌道速度を秒速227メートル上げた。前回アレスVで打ち上げられた予備のブースターは国際宇宙ステーション2(ISS2)と同一軌道傾斜角32度、同一高度400キロを16キロ離れて飛んでいる。クリス、ビル親子が軌道に上がる為に使ったエンデバーもその側に居る筈だ。 今回の計画もいくつかのリスクが考えられた為、ISS2の近くにブースターとシャトルを上げる事で、緊急事態ではISS2へ退避出来るオプションを選択していた。 結果として、ISS2と共に、太陽フレアの最大化の時間で地球の影に入る事が出来て、ブースターもエンデバーも、システムの破滅的な故障は免れている筈だが、両機ともレーザー通信を装備していないので、地上から詳細の状況は把握できていない。 ブースターが使えるかどうかは、理紗が接近して確認するしか無いんだ。 理紗の操縦するアポロ宇宙船は約53分を掛けて高度を400キロに上げ、ブースターへのランデブーポイントへ近づいていた。理紗はその間にEMUを脱いで、青色のパイロットスーツに着替えた。これで少しは動きやすくなる。 右手に二日前に居たISS2が見える。 また、ここに戻ってくるなんて・・と理紗は考えていた。 ブースターも予定通りの位置に見えて来る。 このブースターはアレスVの三段目を改造したもので、総重量は188トン。二段に分かれており、一段目で地球から月への離脱推力を出し、二段目で月軌道への投入、月軌道からの離脱、そして地球軌道の投入の推力を出してくれる。ただし、最後の地球軌道の投入は、二段目の燃料だけでは不足するので、アポロ機械船(メンテナンスモジュール)のSPS(主推進エンジン)を使い、最終減速する計画だ。
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