夢の中

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 修はほうと見とれた。紅色の菓子は光沢のある花びらで、黄色の花芯に近づくにつれ色が濃くなり、花芯の色を引き立てている。花芯の雄しべは一本一本精巧に作られ、少し離れて見れば本物の椿の花と見間違えそうだった。  白椿の菓子のほうも、室内なのに日の光でも当たっているかのように花びらに光沢があり、今開いたかのように思えるくらいだ。どちらもとても美しかった。修は強く惹きつけられて目が離せなかった。 「どうぞ、お召し上がりを」老人が嬉しそうな顔をして勧めた。  我に返った修は、 「いただきます」と言って、そっと紅色の菓子を持ち上げ口の中に入れた。花びらの薄い餅と花芯の中の餡が絶妙に合わさって、しっとりした甘みが口の中に広がった。驚くほど美味しかった。 「素晴らしい味ですね!」修は感嘆した声を出した。  老人はにっこり笑うと、もう一つの湯呑と菓子皿を、掛軸の前に置いて束の間手を合わせた。仏壇の中にも同じ菓子が置かれてあった。 『絵の掛軸にもお供えを置くとは変わった風習だな…? まあ夢だからな。夢でもこんな美味しいものを食べられるなら大歓迎だ』と修は二つ目の菓子に手を出していた。  白椿のほうは白餡で、こちらも今まで食べたことがないほど上品な甘さを味わえ美味しかった。修は至福のひと時を味わった。  老人は卓袱台に戻ってきて座った。 「わしの家は代々、こういう菓子を作っておりましてな。わしも若い頃は職人として腕を振るったものです。お口にあって何より」 「もしかして、この椿のお茶請けはあなたが作られたのですか?」修は驚いて尋ねた。
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