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「モッタイナイ!アンタのマワリのオトコ、ミルメナイね。オイ、テンチョウ、テンチョウ」
中国人はレジ締めの準備をしている店長を捕まえる。店長は面倒臭さが滲み出た薄ら笑いを浮かべて、顔を上げる。
「むぎ子、イイコデショ?ナンデ カレシ イナイネ?」
「いやあ、僕にはなんとも…あはは」
「アンタラ バカダネ!コンナ カワイイコ、モッタイナイヨ」
「いやあ、本当、そう思います」
「コンド オイッコ ショウカイシテヤル。オソウザイヤ ヤッテル。ね、ワカッタネ?」
中国人は言いたいことを言い終えると、嵐のように去って行った。店長は札束をショーケースの裏で数えながら、不機嫌につぶやいた。
「ああいうの、いちいち、丁寧に相手しなくていいよ」
「はい、すみません」
「もっと先輩の対応を見習いなよ。山形さんなんか、ああ見えて、すっごくドライなんだから。ねえ、山形さん?」
「はい?え?何の話ですか?」ショーケースを拭きに来た山形さんが顔を上げる。
「いや、何でもない、何でもないよ」
店長はおどけて笑う。その顔は、ショーケースの熱のせいだろうか、少し赤みがかっている。むぎ子は俯向き加減になって唇を噛み締め、早く店が終わることを願う。
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