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「それで、他の病院には、行ったことがある?うちが初めてじゃない?」
「はい、いくつか…」
「何か、薬は出してもらった?」
「はい。薬は、いくつか。だけど、どれも聞きませんでした。ルボックス、ドグマチール、デプロメール、それから…」
「全く効かなかった?」
「はい。ただ、眠いだけで」
「そうか。そうなると、どうしましょうかね。他の薬を試して見るか、それか、カウンセリングか。」
「カウンセリングは、いくらですか。」
「初回は、1万円ですね。二回目からは、八千円。一応、予約状況を見てみましょうか」
「はい。あの、では、お願いします」
むぎ子はカバンから、分厚い手帳を出した。カウンセラーの名刺や、ネットで調べた心療内科のコピーなどで、むぎ子の手帳はパンパンに膨れ上がっていた。
医者の答えも、カウンセラーの言うことも、そのバカみたいな値段も、どこへ行っても、ろくに代わり映えしなかった。だがむぎ子は藁をも掴む思いでいたので、試せることは、すべて試してみたいと思っていた。
むぎ子はこのように、おばあちゃんの引き出しの金をくすね、親にも内緒で、受験勉強もそっちのけで、こっそり心療内科巡りをしていたのである。
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