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「それでそれで? 二人はどうなったの?」
赤く燃える暖炉の前で、小さな女の子が老婦人から昔話を聞いている。
「怪物はね、『愛の告白』をする為に一生懸命頭を捻って考え出して、娘の元を毎日のように訪れたの。何も思いつかなくて、ただ娘の前で立ち尽くしているだけの日もあったけれどね。だけどついに……」
「100回目の告白が、終わってしまったのね」
女の子の顔が曇る。生贄の娘は食べられてしまうのかと。
「いいえ。100回目を待たずして、77回目の告白の日に怪物は娘にこう言ったの。『どうやら俺は、いつの間にか本気でお前を愛してしまったらしい。お前を食べる事なんて、もう考えられない』って」
「わぁぁ」
女の子は目を光らせて、悦びの声を上げる。
「二人はきっと、いつまでも幸せに暮らしたのよね?」
少女の言葉に、老婦人はにっこりと笑顔で返す。
「お話をありがとう、ナナおばあちゃん!また遊びに来るからね」
少女が去った部屋で一人、老婦人は窓の外を眺める。雪が少しずつ少なくなってきている。春の訪れももう間近だろう。
夫が冬眠から目覚めるのも、きっと間もなくだ。
77回の愛の告白をしてくれた、愛する夫と過ごせる日々を想って、老婦人は花の様に微笑むのだった。
《了》
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