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ワンス・アポン・ア・タイム
「娘よ、最期に選ばせてやろう。お前を食べるのは、100秒後がいいか、100時間後がいいか」
耳まで裂けた口から赤い舌を覗かせながら、怪物は生贄の少女に決断を迫ります。
「ただし、待てるのは100日後までだ。100ヶ月後や100年後じゃ、さすがの俺様もしびれを切らしちまう」
「どうして『100』の数字にこだわるの?」
自分の100倍近く大きな身体の怪物の姿に、おびえること無く少女は尋ねます。
「いいか娘、俺様はこんな醜いなりをしているが、この国を司る百番目の神だ。この背中の瘤の数も100個だし、この尖った牙も100本ある。いわば『100』は、俺様のラッキーナンバーだ。お前を喰う時も、100回よく噛んで飲み込んでやるからな。さぁ決めろ。今すぐ楽になりたけりゃ、100秒後にするか? それともまだ食われる覚悟が出来ないのなら、100日後がいいか?」
「『100』の数から選べばいいのね?」
「あぁそうだ。縁起物の数字だからな」
「それじゃあ私に、100通りの愛の告白を聞かせて。それが果たされたら、喜んでこの身を差し出すわ」
「なにぃ?!」
「貴方が神だと言うのなら、一度公言した約束を、破ったりはしないわよね?」
「……んぁ、あぁ勿論だ」
「それじゃあ聞かせてちょうだい。愛の告白を」
花の様に微笑む娘を前に、怪物は頭を抱える思いだった。何しろ『愛』についてだなんて、今まで考えた事も無かったのだから ─
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