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忍はそこまで答えたところで、ゲームオーバーになったらしく、少し悔しげな表情を浮かべてコントローラーから手を離した。だけど、忍は席を立つ気配を見せない。かといって、次のゲームを始める訳でもなさそうだ。僕はゲームを続けながら、そんな忍に向かって尋ねる。
「予備校には来ないの?」
「気が向いたら行くかも」
「志望校は?」
「東大」
忍はまたもさらりと答える。だけど、その言葉で、僕の手は止まった。画面の中で、パズルがとんどん積み上がっていく。僕はひどくイライラし始めていた。
「東大志望だって? ふざけてるの? 予備校にも来ないでこんなところでゲームしてる奴が受かるわけないだろう?」
「君には関係ないでしょう?」
「ああ、関係ないさ。ライバルが一人脱落して嬉しいだけさ」
「君って東大目指してるんだね」
「それこそ、君には関係ないだろう!?」
僕はついつい言葉を荒らげてしまった。しまったと思ったけれど、忍はまるで気にもしていない様子で、
「まあ、頑張ってね」
と言って静かに立ち上がり、去っていった。
僕が忍に苛立った理由ははっきりしている。僕は近頃成績が伸び悩んでいる。自分では一生懸命勉強しているつもりなのだが、思うように結果に繋がらない。今の状態では、東大を受験するのに心許なく、それが僕にはプレッシャーになっている。
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