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そこにきて、同じ大学を目指しながら、予備校にも来ずにゲームセンターで遊んでいる奴がいる。そのことが許せなかった。とはいえ、本当は僕が彼女に苛立ちをぶつけるような理由などないことはわかっている。ただの八つ当たりだ。
一週間が経ち、僕はいつもと代わり映えのしないホームルームに出席する。いつもと同じように、チューターが生徒の出席をとってゆく。
「数田永矢くん」
「はい」
僕の名前が呼ばれ、返事をする。次は忍の番だが、やはり教室の中に彼女の姿はない。
「佐藤忍さん」
チューターが忍の名前を呼んだ。そのとき突然、教室の扉が開き、
「はい」
という返事が聞こえた。教室中の視線が一気に扉の方に集中する。僕も扉の方に視線を向ける。すると、そこには忍が立っていた。彼女は何事もなかったかのように教室に入ってくると、空いている席に腰を下ろした。
チューターは驚きのあまり、次の生徒の名前を呼ぶのを忘れているようだ。だけど、ハッと我に返った様子で、小さく咳払いをしてから、次の生徒の名前を呼んだ。
全員の名前を呼び終えると、チューターは連絡事項の伝達に移る。そして、最後に、最も重要な情報を伝える。
「知ってのとおり、今週末は模試が開催されます。しっかりと勉強して、模試に備えてくださいね」
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