Cigarette

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「法律を勉強したいから。将来の夢は弁護士だからね」 「ふうん。でも、それって、東大でないといけないの? 法律なんて、法学部のある大学ならどこでも学べるし、東大でなくても弁護士にはなれるでしょう?」 「でも、東大は日本の最高学府だし」 「それって、東大っていうブランドが欲しいってこと?」  僕は忍の問いに答えることができなかった。確かに法律を勉強するだけなら、何も東大に拘る必要などどこにもない。弁護士を目指すにしても、やはり東大でなければならない理由はない。もっと身の丈にあった大学に進んだっていいはずだ。東大に拘っている理由は僕自身にもわからない。もしかすると、忍の言うとおり、僕は東大というブランドを手に入れたいだけなのかもしれない。  模試の会場は独特な緊張感に包まれている。受験本番だというわけでもないのに、悲壮な顔をして固まっている生徒もいる。  僕は教室の中を見回した。もちろん、忍の姿を確認するためだ。まともに授業を受けていないのだから、模試も受けない可能性が高い。それでも、もしかしたらと思い、忍を探す。すると、教室の後ろの方のドアが開き、忍が入ってきた。僕は立ち上がり、忍の元へと向かった。 「ちゃんと受けに来たんだね」     
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