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「受けたい気分だったのよ」
彼女はそう言うと、アイネ・クライネ・ナハトムジークを口ずさみながら、自分の席へと向かっていった。
三週間が経ち、ホームルームで模試の成績が返される。僕の成績は、第一志望の東大文一がC、第二志望の東大文ニがB、第三志望の阪大法学部がAだった。やはり、第一志望にはまだまだという状況だ。
僕は成績表と一緒に渡された全国成績上位者一覧表に目を通す。僕もギリギリ名前が載っているが、クラスメイトは僕よりも上位に名前が掲載されている。静雄も僕より百番ほど上に名前が載っていた。
そして、下から順番に目を通していった僕は、その名前を目にしたとき、時間が止まったかのように感じた。十位に載っている忍の名前。僕は悔しくて涙が出そうになる。僕が毎日真面目に勉強している一方で、忍はゲームに興じている。それなのに、どうして僕が負けなければならないのか。
相変わらず教室の中に忍の姿はない。僕はホームルームが終わると、教室を飛び出した。
いつものゲームセンターに行くと、やはりそこに忍の姿があった。僕は忍の横のゲームに腰を下ろす。すると忍が僕の方を見て言う。
「今日は授業が休講にでもなったの?」
「いや、抜け出してきた」
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