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「時間は掛かるかもしれないけれど、少しずつこの悲しみは忘れよう?これからは暦の傍には僕がいてあげるから。」
「ずっといてくれる?」
「神に誓うよ。」
「もう勝手に私の前からいなくなったりしないで。」
「うん。」
「歴と会えなかった6年間、凄く寂しかった。」
僕もだよ。
暦の細く括れたお腹に腕を巻きつけながら、心の中で返事をする。
本当に長かった。
6年間、一度も愛しい彼女をこの目で見る事ができなかった日々は、苦痛でしかなかった。死んだ方がマシだとすら思ったほどだ。
でももう良いんだ。
今、僕はこの腕で彼女を捕らえる事ができている。
もう二度とこの手から暦を逃す事なんてしなくて良い。
永遠に、彼女は僕の物だ。その保障があるから、英国で過ごした地獄のような歳月なんてどうって事ない。
暦との6年間を犠牲にしただけで、永遠に暦を愛する権利を僕は得たのだ。
歴に抱き締めて貰えるなんて幸せ。パパとママが亡くなってあんなに辛かったのに、歴にまた愛して貰えると思うと嬉しくて涙も枯れちゃった。」
彼女が僕の顔を見上げて、昨日までの半年間、ずっと窓の外ばかりを映していた瞳に僕を映しだした。
紅を乗せたみたいに色づきの良い唇を緩めて、暦は首を横に倒す。
「こんな私って、嫌な女?」
「いいや、微塵も嫌な女じゃないよ。」
「酷い女でもない?」
「僕にとって、暦はずっと愛しい女だよ。それ以外にない。」
迷わず答えた僕に、彼女は満足そうに表情を崩す。
それから「歴はそう言ってくれるって知ってたよ。」と、言葉を放った。
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