月狂条例第ニ/初月

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「他に愛しい女を作っていたら許さない。」 「怖いね。」 「だって、歴が私をこうしたんだよ?」 「……。」 「歴が私を溺れさせたの。」 「自覚はあるよ。」 「だから歴の一生を懸けて、私を愛して。そうしてくれなきゃ、私死んじゃう。」 「言われなくても。」 「キス、してくれないの?」 彼女が指先で僕の唇を撫でて笑う。 早くしてと言わんばかりに瞼を伏せて、顔を近づけてくる。 「私は歴の物だよ。」 「そして僕は暦の物だ。」 「んっ…ふぁっ……ん…。」 果汁の滴る梨や桃よりも、彼女との口付けは甘美に満ちている。 キスが終わりを告げれば、僕の首へと腕を回しながら窓の外を一瞥した。 「今夜は満月らしいよ。」 「そうなんだ。」 「ねぇ、歴。今夜、二人きりで薔薇園に行きたい。」 耳元で響く、可愛いお願い事に自分の口角が吊り上がる。 「良いよ、連れて行ってあげる。」 僕の声が、彼女の部屋にこだました。
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