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「他に愛しい女を作っていたら許さない。」
「怖いね。」
「だって、歴が私をこうしたんだよ?」
「……。」
「歴が私を溺れさせたの。」
「自覚はあるよ。」
「だから歴の一生を懸けて、私を愛して。そうしてくれなきゃ、私死んじゃう。」
「言われなくても。」
「キス、してくれないの?」
彼女が指先で僕の唇を撫でて笑う。
早くしてと言わんばかりに瞼を伏せて、顔を近づけてくる。
「私は歴の物だよ。」
「そして僕は暦の物だ。」
「んっ…ふぁっ……ん…。」
果汁の滴る梨や桃よりも、彼女との口付けは甘美に満ちている。
キスが終わりを告げれば、僕の首へと腕を回しながら窓の外を一瞥した。
「今夜は満月らしいよ。」
「そうなんだ。」
「ねぇ、歴。今夜、二人きりで薔薇園に行きたい。」
耳元で響く、可愛いお願い事に自分の口角が吊り上がる。
「良いよ、連れて行ってあげる。」
僕の声が、彼女の部屋にこだました。
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