月狂条例第二/半月

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硝子で造られた天井から覗く満月が、欲に煽られた僕の姿を照らしている。 「そういうの、可愛過ぎて困る。」 「んっ…。」 小さく苦笑を漏らしてから、そっと彼女に接吻する。 何度か軽く触れるだけで、深くなる前に終わった口付けだけで満足できるわけがない。 「これで許してくれる?」 「うん。歴なら何でも許しちゃう。」 「甘い人だね。」 「そうだよ、好きな男には無条件に甘いの私。」 「知ってる?」 「何を?」 唐突に投げられた問い掛けに、彼女はきょとんとした表情で首を横に倒した。 そんな相手と目線が絡む位置まで屈んだ僕は、口を彼女の耳元へと寄せて言葉を吐く。 「それ、僕も同じだって事。」 「………っっ。」 僕の落とした声に、暦の頬が仄かに桜色へと染まる。 すぐ傍で咲いている一輪の薔薇を手で?ぎ取った僕は、甘い香りを広げる花に鼻を近づけた。 「それじゃあ歴は、私を甘やかしてくれる?」 薔薇へと落とされていた視線が、正面から掛かった彼女の声で上昇する。 「うん。ドロドロにね、蕩けるまで暦を甘やかしたい。」 甘やかせば甘やかす程、それを受けている人間は堕落していく。 何もできなくなって、甘さを頼り、甘さを求め、甘さに縋り、そして……甘さに依存する。 そう、だから早く暦も僕に甘えてしまえば良い。 甘さに沈んで、溺れて、窒息してしまえば良い。
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