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満月の夜が、間もなく終わってしまう。
「両親を失ったショックで、暦は歩く事もできなくなったの。知ってた?」
「どうしてそんなに嬉しそうなのですか?」
「嬉しそうじゃなくて、嬉しいんだよ。暦はもう僕がいないと自由に歩く事もままならない。ずっと、僕の監視下にいてくれるからね。」
「貴方は狂っている。また暦様を穢すおつもりですか?」
「いいや、永遠に愛してあげるつもりだよ。」
「この狂人め。」
低い声で吐き捨てられた言葉に、僕はクスリと鼻で笑って肩を竦めた。
それから壁に預けていた背中を起こして、相手を見据える。
「今の使用人としての失言は見逃してあげる。でも、忘れてはいけないよ。次、お前がまた僕と暦の愛を割こうとしたのなら……。」
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